ブログblog

2021.11.20これからの雅楽

雅楽は三管(鳳笙・篳篥・龍笛)をできるからこそ見える本質がある

「雅楽って面白い!楽しい!を伝える」

 

こんにちは。雅楽演奏家・講師の山口創一郎です。

 

僕は雅楽をしている人の中ではかなりめづらしい??(らしい)

 

雅楽の中で使う三つの管楽器である

 

鳳笙(ほうしょう)

篳篥(ひちりき)

龍笛(りゅうてき)

この三つの楽器を演奏もできれば、

 

楽器の体験やお稽古の講師として現在活動しております。

 

自分では無意識にいつの間にかできてしまっていたことなので

 

あまり気にしていませんでしたが

 

実際これというのはなかなかすごいことである反面、

 

これまで雅楽の世界では邪道、

 

いわば禁忌とされていた所業だとも言われています

 

というのも、雅楽は基本的に三つの管楽器のうち、

 

一つしか習得してはいけないというルールが、

 

団体によっては現在でも多くあったりします。

 

東京にある宮内庁式部職楽部という組織は

 

宮中での雅楽の演奏などを行っている

雅楽のプロ団体(公務員)ですが、

 

ここで楽師をされている人こそ、

三つの管楽器のうちの一つしか習得できなければ、

 

他は絃楽器の筝と琵琶を選択しなければならなければ

 

舞も右舞(うまい)と左舞(さまい)、

いづれかを選択して生涯雅楽をすることになります。。

 

将来自分の持ち管としてやっていく使命というものを持つわけです。

 

宮内庁を中心に他の雅楽団体でも、

 

このような持ち管、そして絃楽器や舞・打楽器はパート制をとっているところは現在も多くあります。

 

実は山口も、今では三管を演奏できるということを公にはしているものの、

 

4、5年前までは持ち管は龍笛であって、それ以外の楽器には手を出さないようにしていました。

 

小中高の間で篳篥と笙を習熟はしていたものの、

 

基本一管しかしないようにするようにしていたため、

 

楽器を転換したことはあったものの、

どれか一つに固執して習ったり練習をする時期が

15年近く続けていました。

 

だからこそ三日坊主の故の人間が続けられたのだと思いますが・・・

 

それは上記の先入観が強く、

暗黙の了解でやってはいけない流れに流されていた為、

 

大学時代は龍笛を極めてやっていくことを勝手に抱いていた為、

 

小中高で習熟していた笙と篳篥を封印していました。

 

しかし、大学卒業後、法人勤務を4年間して大阪に帰った後に、

 

とある人の情報をSNSで知り、その均衡が破られてしまいます。

 

なんとその方は、三管演奏できるマルチプレイヤーとネットにも

 

公に書き活動をされていたのです。

 

「え!?三管演奏することってご法度だけど、いいのか??」

 

僕はそれに雷を撃たれた気分で驚きました。

 

その後、その方とはSNSで知り合った後にその方が主催する練習会に

 

参加してみました。

 

すると、その方は龍笛が持ち管というのは知っていましたが・・・

 

普通に篳篥吹いてるではありませんか!!笑

 

しかも管絃の曲目を一通り吹かれていたので、衝撃の連続でした。

 

そこから僕は、

 

「今まで篳篥と鳳笙を封印していたけど、これはやらないと損だ」

 

いつの間にかそう思うようになり、さまざまな練習会に参加したり、

 

自分で主催していた練習会などで篳篥と鳳笙も練習を始めました。

 

元々篳篥は高校時代にパートリーダーやっていたので、

 

そこそこ吹けてたっぽいのですが、

 

篳篥の先っぽにつけるリードの制作がネックで、

 

手先の不器用さが絶望的だなほど酷かったので、

 

高校でお別れして大学で楽器を変えようと思っていました。

 

笙は中学3年の1年間で習いましたが、

 

受験を篳篥の実技で受験した関係上、

それ以降やる機会がなくなりました。

 

それがまさかの10年越しくらいに再開。

 

そして2019年に入り、周りで篳篥や笙の奏者が人手不足になり、

 

演奏する機会をたくさんいただくことになりました。

 

その中でわかっていったこと。

 

「雅楽はマルチ(鳳笙・篳篥・龍笛)で習熟するからこそ、見える本質がある」

 

ということでした。

 

そもそも、マルチで演奏者になると何が問題なのか??

 

それは、どの楽器も中途半端になってしまうということです。

 

僕が知っているいろんな楽器を吹けるという方も、

 

大方全ての楽器が中途半端で

 

とてもうまいとは言い切れない人というのも少なかれ居られました。

 

それは自分でもやっていて痛感している部分なんですが、

 

どうしても練習時間が3分割されてしまう分、

一管をやっている人の3倍は

練習を要しないとダメだからです。練習不足になりがちです。

 

世の中では、今でも

「どれかを選ばなければダメ」

 

という選択をしないといけない時がほとんどでしょう。

 

鳳笙をとるか、篳篥をとるか、龍笛をとるか、

 

ゲームのポケットモンスターでも、

最初の御三家(初期はフシギダネ・ヒトカゲ・ゼニガメ)

のどれか一つを選択しなければ

物語は始まらないのと同じように、

 

雅楽も最初に楽器を選択しなければなりません。

 

しかし、ポケモンではある程度物語を進めていくと、

この御三家のポケモンはいづれ入手でき、育てることができ、

 

手持ちのパーティを強化して最終的には自分自身の戦力として使うことができます。

 

最終的には「全てを選ぶことができる」わけです。

 

雅楽もこれに当てはめれば、「全てを選ぶこと」が可能です。

 

最初はどれか一つを選べばいい。

 

その上で、ある程度その楽器を極めていく過程の中で

 

教養として、別の楽器を学ぶことを選択すれば

 

最終的には全てを選ぶことができるわけです。

 

そしてポケモンはその3体(進化すればフシギバナ・リザードン・カメックス)を手持ちにすることができるからこそ、

戦力にできるように

 

雅楽も三管できるからこそ、できるバリエーションも増えれば

 

自分の持ち管自体もより上手くなることができたりもしちゃいます。

 

何故か??

 

合奏スキルが著しく高くなるからです。

 

とある団体の方は、宮内庁の先生に鳳笙を数年習っているのに

 

合奏では篳篥と龍笛に全く合わせられないという人が少なからずいるということをお聞きしたことがあります。

 

何故か??

「自分の管のことしかわかっていない」からです。

 

なんだかんだ言って雅楽は合奏音楽です。

 

持ち管がどれだけ上手くなろうが、

 

1人で吹ける技術があろうが

 

他の楽器と合わせられなかったら意味がありません。

 

そこで他の楽器の動きが手に取ってわかればどうでしょう??

 

これほど合奏しやすいことはないでしょう。

 

マルチでやっていると、

どの楽器をやっている時もすぐに他の楽器の動きもわかれば

 

他の楽器の演奏している人の気持ちも汲み取ることができやすくなります。

 

「篳篥、もっと早く進めてくれないかなー」

 

「鳳笙、インジャの位置が定まらないのなんとかならないかなー??」

 

「龍笛、かけ吹きの入り方が若干違うなー」

 

とか、全てを網羅(もうら)しているからこそ

見えてくることが多かったりします。

 

そしてこれは自分がメンバーとして合奏をするときは勿論ですが

 

指導する方に回ると倍以上にこれの重要性が痛感します。

 

一つの楽器しかできない人が講師に来てもらっても

 

その人は一つの楽器しか指導できないので他の楽器のことは

 

何も触れることができません。

 

触れたとしても、やったことがないであったり、

「わかっていないのにものを言うんじゃねー!」

とか

 

色々と後々で周りに不満を溜めるきっかけにもなりかねないですし、

 

一つしかできない人を3人呼ばないといけず、

 

その3人の方針が違っていれば余計調和が

取りづらくなることだってあるでしょう

 

しかし、1人で全てのことを把握していると、

この問題は解消されます。

 

三つの楽器のことも理解できている為、

どういう気持ちかも組み取れれば

 

全体の方針としてお稽古を進めていけるので、

かなりスムーズに指導ができたり、

 

マンツーマンや管別の際に合奏ができたり、

他管の動きを全て伝えることが合奏前にできたりすることも

大きなメリットになります。

 

全てがわかっているからこそ演奏技術も上がれば、

指導スキルにもつながる。

 

僕は現在そこを目指す為に、

三管の次は現在教養として楽筝と舞を習熟を始めました。

絃楽器や舞を習っていく中でも、新たな発見が多く見えてきます。

 

雅楽の奥深さがさらにわかりますし、

 

全てをプレイヤーとしてやるからこその、

その楽器をやっている人たちの気持ちや

 

大変さを経験することができます。

 

それがわかった上での指導はこの上ないほどこちらも

楽しくできますし、

 

周りにも潜在的・無意識に気配りもできやすくなります。

 

「ここの笙のフレーズ、難しいよねー」

 

とか

 

「篳篥のここ、最初はそんなもんですよ。数をやっていくと、そのうちなってくるようになります!」

 

とか

 

そういう言葉のかけ方にも本質的な意見を言ってあげられることができます。

 

これは雅楽に限らず、どの分野においても、

 

相手の立場に立つことって重要で

 

男性と女性の違いであったり、

(ここは性別を入れ替えるはできませんが、、)

 

貧富の違いであったり、

 

環境や立場の違い、

 

そういう立ち位置などを見極めるからこその、

 

いい演奏・いいお稽古が作り出せる。

 

そして全ての楽器をやっていくと、その楽器の特色や特性を知ることができ、

 

その楽器の性格を掴まなければなりません。

 

ある種、「我」をいい意味で無くしていく種にもなります。

 

僕は三管するようになってから自分がどう吹きたいとか、

 

こうしなければならないと言った先入観がいつの間にかなくなり、

 

今では

 

「どうすれば他の楽器が入りやすい・気持ちよく吹ける流れを作れるのか??」

 

どの楽器をすることになってもそこばっかりを考えてしまいます。

 

僕が演奏やお稽古に加われば吹きやすい・心地よいと

思ってもらえるような演奏やお稽古を

 

今後もマルチでやるからこそ作っていきたいこの頃です。

 

本日はここまで!

 

SHARE
シェアする

ご予約

 webからのご予約承っております。